「30代から自社開発企業へ転職するのは難しいのでは?」
「SI/SES企業での経験しかなく、技術力に自信がない」
「転職活動の進め方や、転職後のリアルな実態が知りたい」
あなたは今、このような不安や疑問を抱えていないでしょうか。
この記事を書いている私も、数年前まであなたと同じ悩みを抱えるエンジニアでした。30代前半、約10年間SI/SES企業に勤務し、レガシーな環境と将来への漠然とした不安の中で働いていたのです。
この記事は、そんな私が30代前半でSI/SES企業からWeb系自社開発企業への転職を成功させた体験談を、余すところなくお伝えするために書きました。
この記事を読めば、30代のSI/SESエンジニアが自社開発へ転職する際の現実がわかります。私が直面した面接やコーディング試験のリアルな体験談、そして転職後に感じた良いギャップと厳しいギャップの両方を知ることが可能です。
「自分にもできるだろうか」「今から何を準備すればよいのか」といったあなたの悩みを解消するヒントが、ここにあります。
なぜ30代で転職を決意したか?SI/SES時代の停滞感

私が本格的に転職を考え始めたのは、32歳の時でした。新卒から約10年間、SI/SES企業に勤務し、メイン言語のJavaを使ってきました。客先常駐として、さまざまな現場を経験したのです。
一見、順調なキャリアに思えるかもしれません。しかし、私の心の中には「このままでいいのだろうか」という強い焦りがありました。
一番の理由は、知識の停滞と成長の鈍化を肌で感じていたからです。
長年同じ環境にいると、どうしても使う技術や考え方が固定化してきます。私が担当する現場の多くは、残念ながらレガシーな環境でした。古いJavaのバージョンを使い続け、独自に作り込まれたフレームワークの保守が主な業務です。
新しい技術をキャッチアップしようにも、業務で使う機会はほとんどありません。クラウド技術やコンテナ技術といったモダンな技術は、遠い世界の出来事のように感じられました。
また、SI/SES特有の環境も、私の危機感を強めました。現場では、言われたことだけを正確にこなすことが評価されます。自発的な改善提案よりも、仕様書通りに動くプログラムを納期までに作ることが最優先されるのです。
もちろん、それはそれでプロフェッショナルな仕事です。しかし、私には「言われたことだけやる」環境が、自分の成長を止めているように思えてなりませんでした。
このまま40代、50代を迎えた時、自分はエンジニアとして市場価値を保てているだろうか。技術の進歩から取り残され、調整業務ばかりのエクセル職人になってしまうのではないか。
そんな強い危機感が、私を転職へと突き動かしたのです。新しい技術やモダンな開発プロセスに挑戦したい。エンジニアとして、もう一度本気で成長したい。その思いが日増しに強くなっていきました。
転職前の労働環境:フルリモートでも実態は…
転職を考え始めた当時、私の働き方はフルリモートでした。新型コロナウイルスの影響もあり、数年前から在宅勤務が基本となっていたのです。
「フルリモートなんて、うらやましい」
「働きやすい環境だったのでは?」
そう思われるかもしれません。確かに、通勤時間がなくなったメリットは大きかったです。
しかし、実態は決して楽なものではありませんでした。
フルリモートになったことで、かえって労働時間があいまいになった面があります。客先常駐(SES)の形態は変わらないため、複数のプロジェクトや現場との調整業務に追われる日々でした。
チャットツールは常に通知が鳴りやまず、日中は会議と調整で手一杯。自分の開発作業ができるのは、周りが静かになった夕方以降という日も珍しくありません。
そして、最も負担だったのが深夜の会議です。
さまざまなステークホルダーの都合を合わせようとすると、どうしても夜遅い時間に会議が設定されがちでした。フルリモートだから参加できてしまう、という側面もあったかもしれません。22時から始まる会議が、常態化していたのです。
SI業界特有の多重下請け構造の中で、私が求められる役割も変化していました。純粋な開発スキルよりも、顧客への報告資料作成や、上位の会社への進捗報告、他部署との調整といった管理業務の割合がどんどん増えていったのです。
「自分はエンジニアとして、本当に成長できているのだろうか」
深夜まで続く会議のモニター画面を見ながら、私は何度も自問自答を繰り返していました。肉体的には自宅にいますが、精神的には常に仕事に縛られている感覚。この環境から抜け出したいという思いが、転職決意の最後の一押しとなりました。
転職活動の現実:Java経験は強みだが…

転職を決意し、私はまずいくつかの転職エージェントに登録しました。私の武器は、約10年間のJavaでの開発経験です。
エージェントからは「Javaの経験、リーダー経験があれば、紹介できる案件は多いですよ」と言われ、少し安心したのを覚えています。
実際、SIerやSES企業からのオファーは、すぐにもらえそうでした。しかし、私の目標はあくまで「自社開発企業」への転職です。
ここで、最初の現実を知ることになります。
私のメイン言語はJavaでしたが、Web系の自社開発企業で使われているモダンな言語(例えばRubyやGo、Pythonなど)にも興味があり、「あわよくばスキルチェンジもできないか」と淡い期待を抱いていました。
しかし、30代スキルチェンジでの転職は、想像以上に厳しいものでした。
企業側からすれば、30代のエンジニアに求めるのはポテンシャルではなく、即戦力としてのスキルです。未経験の言語をこれから学ぶ人よりも、今ある技術(私の場合はJava)でいかに貢献できるかを問われます。
結局、私は「Javaエンジニア」として転職活動の軸足を固め直しました。
幸い、自社開発企業の中にもJavaをメインで使っている企業は多くあります。(例えば、大規模なECサイトや金融系のWebサービスなど)
しかし、ここでもSI/SES時代とのギャップに気づかされます。
面接で深く問われるのは、「Javaのフレームワークを使って何を作ったか」だけではありません。
- なぜその技術を選んだのか?
- 大規模なトラフィックをどうさばいたか?
- パフォーマンスチューニングの経験はあるか?
- テストコードはどのように書いているか?
単にJavaが書けるだけでは不十分。自社のサービスを継続的に成長させ、安定的に運用していくための、より深い知識と経験が求められたのです。SI/SES時代にはあまり意識してこなかった視点も多く、自分の知識不足を痛感する場面もありました。
最大の壁「コーディング試験」の難易度
転職活動の中で、私にとって最大の壁となったもの。それがコーディング試験です。
SI/SES企業に勤務していた約10年間、いわゆる「アルゴリズムとデータ構造」を意識してコードを書く機会は、正直に言ってほとんどありませんでした。業務で求められるのは、仕様書通りに動くロジックを、既存のフレームワークやルールに則って実装することでした。
しかし、私が応募した自社開発企業の選考プロセスには、ほぼ例外なくコーディング試験が含まれていたのです。
その形式はさまざまでした。
- Webテスト式:制限時間内に、オンライン上で出題される複数のお題を解く。(例:AtCoderのようなプラットフォームを使う)
- ライブコーディング形式:面接官と画面を共有しながら、その場で出されたお題を解いていく。
特に私が苦戦したのは、Webテスト形式とライブコーディング形式です。
出題される問題は、「〇〇フレームワークを使って××の機能を作ってください」といった業務的なものではありません。「この文字列の中から、特定の条件を満たす部分文字列を見つけなさい」といった、計算量や効率的なアルゴリズムを問うものが中心でした。
最初、何の対策もせずに試験に臨んだ私は、まったく歯が立ちませんでした。
「えっ、こんなに難しいの?」
「業務でこんなコード書いたことない…」
頭が真っ白になり、制限時間だけが過ぎていく。SI/SES時代に、もっと日常的に基礎体力トレーニングを積んでおくべきだったと、心から後悔しました。
これから自社開発企業を目指す方は、技術面接の対策と並行して、コーディング試験の対策にも十分な時間を割くことを強くお勧めします。これは、対策していないと本当に厳しいと感じた、私の偽らざる実感です。
転職は早いほうがよい?30代でも挑戦は可能か

転職活動を進める中で、私は何度も「もっと早く行動しておけばよかった」と感じました。
「新しい技術、現場に挑戦したい」
もしあなたが今、そう思っているならば、転職活動(あるいは学習)は1日でも早く始めたほうがよいです。
これは、脅しでも何でもありません。現実的な理由があります。
年齢が上がるほど、転職市場で求められるものが変わってくるからです。20代であれば「ポテンシャル」や「学習意欲の高さ」が評価され、未経験の分野でも採用されるチャンスが多くあります。
しかし、30代、特に30代半ば以降になると、企業側は「即戦力」を求めます。ポテンシャル採用の枠はぐっと減り、その分野での高い専門性や、チームを率いたマネジメント経験が要求されることが一般的です。
私の場合、30代前半(32歳)だったことが、ギリギリ「ポテンシャル+即戦力」の両面で見てもらえた要因の一つだったかもしれません。
とはいえ、30代だからもう遅い、とあきらめる必要は全くありません。
私自身が30代前半で、レガシーなSI/SES環境から自社開発企業への転職を成功させることができました。
大切なのは、年齢を嘆くことではなく、「何をやりたいか」を明確にすることです。そして、その目標に対して、今すぐ行動(学習・対策)を始めること。
コーディング試験の対策を始める。クラウド(AWSやGCP)の認定資格の勉強をしてみる。GitHubで自分のポートフォリオ(製作物)を公開する。
何でも構いません。小さな一歩を踏み出すことが、未来を変えることにつながります。
また、SI/SESでの経験がすべて無駄になるわけでもありません。
- 大規模システムの運用・保守経験
- 顧客との折衝や要件定義のスキル
- 障害発生時の冷静な対応力
- ドキュメント作成能力
これらは、自社開発企業においても必ず活きる場面があります。「自分にはモダンな技術がないから…」と卑下する必要はありません。あなたの10年の経験は、見せ方次第で強力な武器になるのです。
転職後の現実①:レベルの高さと成長痛
数ヶ月にわたる転職活動の末、私は無事に第一志望群だった自社開発企業から内定をいただくことができました。
入社してまず感じたのは、周りのメンバーの技術レベルの高さです。
新卒数年目の20代のエンジニアが、私よりもはるかに深い技術的知識を持っている。アーキテクチャやパフォーマンスチューニングについて、日常的に活発な議論が交わされている。そんな環境でした。
正直に告白すると、入社してからの数ヶ月間は、ついていくのがやっとでした。
SI/SES時代に「当たり前」だと思っていたことが、まったく通用しないのです。
例えば、コードレビューの文化。
転職前は、いわゆる「コーディング規約」に沿っているか、明らかなバグがないか、程度のチェックが中心でした。しかし、転職先では「なぜこの設計にしたのか」「もっと効率的な書き方はないか」「テストコードが不十分ではないか」といった、非常に本質的で厳しいレビューが日々行われます。
例えば、テストコードの重要性。
転職前は、テストコードを書く文化が(現場によっては)希薄でした。しかし、転職先ではテストコードを書くのは当たり前。むしろ、テストコードがなければプルリクエスト(修正依頼)を出すことすらできません。
CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)のパイプラインは整備され、開発からデプロイまでのスピード感が圧倒的に違います。
転職前はレガシーなJava環境でしたが、転職後はモダンなJavaのバージョンを使い、クラウドネイティブな技術(コンテナやマイクロサービスなど)にも触れる機会が一気に増えました。
毎日が勉強の連続です。キャッチアップしなければならない知識が山のようにあり、正直「大変だ」と感じることも多いです。
しかし、この「大変さ」は、SI/SES時代に感じていた「停滞感」とはまったく質が異なります。
これは、前向きな「成長痛」です。
日々新しい知識を吸収でき、自分がエンジニアとして確かに成長している実感がある。優秀な同僚たちからもらえるフィードバックが、何よりの刺激になっています。
転職後の現実②:評価軸の変化と残業時間

転職して、働き方そのものも劇的に変化しました。
最も大きな変化は、残業がほぼゼロになったことです。
転職前は常態化していた深夜の会議や、休日出勤(障害対応以外)は、転職してから一度もありません。定時になれば、ほとんどのメンバーがさっと仕事を終えて帰宅します。
会社として「生産性高く働き、プライベートも充実させる」という文化が根付いているのです。
その結果、私には「時間」が生まれました。
平日の夜や週末に、自分のための時間ができたのです。その時間を、私は技術書のキャッチアップや、趣味、家族との団らんに充てています。ワークライフバランスは、転職前に比べて劇的に改善しました。
ただし、良いことばかりではありません。
もう一つの大きな変化、それは「評価軸の変化」です。
転職前のSI/SES企業では、極端に言えば「言われたことだけを、ミスなく期限内にやれば」評価されました。受け身の姿勢でも、ある程度の評価は得られたのです。
しかし、今の自社開発企業は違います。
自発的に行動し、自ら仕事を見つけることが強く求められます。
「サービスをより良くするために、何ができるか?」
「今、チームが抱えている技術的な課題は何か?」
「その課題を解決するために、自分はどう動くべきか?」
これらを常に考え、周りを巻き込みながら提案し、実行していく力が求められるのです。
言われたことを待っているだけでは、まったく評価されません。
「あなたは会社に、どんな付加価値をもたらしたのですか?」という問いに、常に向き合い続ける必要があります。
これは、受け身の働き方に慣れていた私にとって、残業がなくなること以上に大きなカルチャーショックでした。レベルの高い環境で自走し続ける厳しさはありますが、それこそが自社開発企業で働く醍醐味なのだと感じています。
【総括】30代で転職してよかったか?
ここまで、私の30代での転職体験記をお伝えしてきました。
SI/SES企業から自社開発企業へ。その道のりは、決して平坦ではありませんでした。
コーディング試験の壁にぶつかり、自分の実力不足を痛感しました。
転職後も、周りのレベルの高さに圧倒され、必死にキャッチアップする日々が続いています。
では、結論として「転職してよかったか?」
答えは、心の底から「転職して本当によかった」です。
転職には、良いところも、悪いところ(大変なところ)もありました。
【転職してよかった点】
- 残業が激減し、ワークライフバランスが劇的に改善した。
- モダンな技術環境(レガシー脱却)で開発できるようになった。
- 優秀な同僚たちに囲まれ、日々成長を実感できる。
【転職して大変だった点(悪い点)】
- コーディング試験など、選考対策が非常に大変だった。
- 求められる技術レベルが高く、入社後のキャッチアップが続く。
- 評価軸が「受け身」から「自発的」に変わり、自走する力が求められる。
すべてが楽園というわけではありません。自ら学び、動き続けないと、あっという間に取り残されてしまう厳しさがあります。
しかし、何よりも大きいのは、SI/SES時代に感じていた「キャリアの停滞感」や「将来への漠然とした不安」が、完全に解消されたことです。
今、私は「エンジニアとして成長している」と胸を張って言えます。
もし、私がこの体験記で一つだけ後悔を述べるとすれば、それは「できれば20代のうちに転職しておけばよかった」という、ありきたりな言葉に尽きます。もっと早くこの環境に身を置いていれば、今頃はもっと違う景色が見えていたかもしれません。
もし今、あなたが30代でSI/SESからの転職を迷っているなら。
もし、かつての私と同じように「停滞感」や「焦り」を感じているなら。
まずは、小さな一歩からで構いません。
転職エージェントに登録してみる。
コーディング試験の勉強を始めてみる。
気になる企業の技術ブログを読んでみる。
その小さな行動が、あなたの未来を大きく変えるきっかけになるはずです。