「Javaのフレームワークって種類が多すぎて、どれを選べばいいかわからない…」
「Web開発を始めたいけど、おすすめのJavaフレームワークが知りたい」
「それぞれのフレームワークの違いを一覧で比較したい」
Javaを学び始めると、誰もが一度は「フレームワーク」の壁にぶつかります。私自身、10年ほど前にJava開発の世界に足を踏み入れたとき、Spring、Struts、JSFなど、たくさんの専門用語が飛び交う現場で途方に暮れた経験があります。当時は情報も少なく、手探りで学習を進めるしかありませんでした。
しかし、さまざまなプロジェクトでフレームワークの選定や開発に携わってきた今なら、自信を持って言えます。フレームワークは、あなたの開発を力強くサポートしてくれる最高の相棒です。正しく選んで使いこなせば、開発効率は飛躍的に向上し、コードの品質も格段に安定します。
この記事では、私の10年以上のJava開発経験をもとに、数あるJavaフレームワークの中から特におすすめの18種類を厳選しました。
この記事を読めば、あなたの目的に合った最適なJavaフレームワークが見つかり、自信を持って次のステップに進めるようになります。 フレームワークを探しているあなたの疑問に、真正面からお答えします。
Javaフレームワークとは?

Javaフレームワークとは、Javaでアプリケーションを開発するための「骨組み」や「枠組み」のことです。家を建てるときに、ゼロから木材を切って釘を打つのではなく、ある程度組み立てられた骨組みを使うと早く、そして頑丈に家を建てられますよね。フレームワークは、まさにその骨組みの役割を果たします。
アプリケーション開発でよく必要になる機能(例えば、画面表示、データベースとの連携、セキュリティ対策など)があらかじめ用意されているのです。開発者は、その骨組みに沿って必要な部分だけを記述すれば、効率的に質の高いアプリケーションを開発できます。
フレームワークを使うメリット
Javaフレームワークを利用するメリットは、主に次の3つです。
- 開発スピードの向上もっとも大きなメリットは、開発スピードが上がることでしょう。車輪の再発明をすることなく、用意された便利な機能を活用できるため、開発者は本来集中すべきビジネスロジックの実装に専念できます。結果として、開発期間の短縮につながります。
- コードの品質と統一性の担保フレームワークが提供するルールに沿って開発を進めるため、誰が書いても一定の品質を保ったコードになります。複数人での開発がスムーズに進み、属人化を防ぐ効果もあります。また、メンテナンスもしやすくなるのです。
- セキュリティの向上Webアプリケーションには、セキュリティ上の脆弱性がつきものです。実績のあるJavaフレームワークには、さまざまな攻撃からアプリケーションを守るための仕組みが組み込まれています。自力でセキュリティ対策を実装するよりも、はるかに安全なアプリケーションを構築可能です。
フレームワークとライブラリの違い
フレームワークとよく似たものに「ライブラリ」があります。両者は混同されがちですが、明確な違いが存在します。
その違いは、アプリケーション全体の主導権をどちらが握っているかという点です。
- ライブラリ: 便利な機能を集めた「道具箱」のようなもの。開発者が必要なときに、道具箱から道具(機能)を取り出して使います。主導権は開発者側にあります。
- フレームワーク: アプリケーションの「設計図」や「骨組み」です。開発者は、その設計図に沿って部品を組み立てていきます。主導権はフレームワーク側にあり、フレームワークが開発者の書いたコードを呼び出す形で処理が進みます。
簡単に言うと、「こちらから使うのがライブラリ」で、「向こうから使われるのがフレームワーク」と覚えると分かりやすいでしょう。
Web開発でよく使われるJavaフレームワーク

ここからは、具体的なJavaフレームワークをカテゴリ別に紹介していきます。まずは、Webアプリケーション開発で頻繁に利用される定番のフレームワークです。
Spring Framework(Spring Boot含む)
Spring Frameworkは、現在のJava Web開発において最も広く使われている、事実上の標準(デファクトスタンダード)です。非常に多機能で拡張性が高く、大規模なエンタープライズシステムから小規模なWebアプリケーションまで、あらゆる開発に対応できます。
特に、「Spring Boot」の登場により、その人気は不動のものとなりました。SpringBootは、Spring Frameworkをより簡単に利用するための仕組みです。面倒な設定作業を大幅に自動化してくれるため、開発者はすぐにコーディングを始められます。
これからJavaのWeb開発を学ぶなら、最初にSpring Bootを学習することをおすすめします。求人数も圧倒的に多く、習得しておけば活躍の場が大きく広がるでしょう。
Struts
Strutsは、かつてJavaのWeb開発で一世を風靡したフレームワークです。MVC(Model-View-Controller)という設計モデルを広く普及させた功績があります。
しかし、現在ではより後発で高機能なSpring Frameworkにその座を譲っています。新規開発で採用されることは稀ですが、長年運用されているシステムの保守・改修案件では、今でも見かけることがあります。Javaフレームワークの歴史を知るうえで、重要な存在です。
JSF(JavaServer Faces)
JSFは、Oracle社が主導して開発しているJava EE(現Jakarta EE)標準のフレームワークです。画面の部品(コンポーネント)を組み合わせてUIを構築していくのが特徴で、画面開発の手間を軽減できます。
ドラッグ&ドロップで画面を作成できる開発ツールとの相性も良いです。エンタープライズ向けの業務アプリケーション開発などで採用されるケースがあります。
Play Framework
Play Frameworkは、軽量で生産性の高さを重視したWebアプリケーションフレームワークです。設定より規約(CoC)の考え方を採用しており、少ないコード量で素早く開発を進められます。
Javaだけでなく、関数型プログラミング言語であるScalaでも利用できる点が大きな特徴です。リアルタイム通信を扱うWebアプリケーションや、高いパフォーマンスが求められるサービスの開発に向いています。
マイクロサービス・クラウド向けフレームワーク

近年、クラウド技術の普及に伴い、「マイクロサービス」という設計手法が注目されています。これは、大きなアプリケーションを小さなサービスの集合体として構築する考え方です。ここでは、そのようなクラウドネイティブな開発に適した新しい世代のJavaフレームワークを紹介します。
Micronaut
Micronautは、高速な起動時間と低いメモリ消費量を特徴とするモダンなフレームワークです。従来のフレームワークが実行時に行っていた処理を、コンパイル時に済ませておく「AOTコンパイル」という技術を採用しています。
サーバーレス環境やコンテナ環境など、リソースが限られたクラウド環境で大きなメリットを発揮します。
Quarkus
Quarkusは、Red Hat社が開発を主導する、コンテナおよびサーバーレス環境に最適化されたJavaフレームワークです。GraalVMという技術と組み合わせることで、Javaコードをネイティブ実行ファイルにコンパイルできます。
その結果、驚異的な起動速度とメモリ効率を実現します。「超音速、亜原子のJava」というキャッチコピーが、その性能を物語っています。
Helidon
Helidonは、Oracle社が開発しているマイクロサービス向けの軽量フレームワークです。シンプルであることを重視しており、学習コストが比較的低いのが特徴です。
2つの開発モデルがあり、ライブラリ的に使える「Helidon SE」と、より多くの機能を提供する「Helidon MP」から選択できます。
データベース・永続化関連のJavaフレームワーク

アプリケーション開発において、データベースとの連携は欠かせません。Javaオブジェクトとデータベースのテーブルをスムーズに繋ぎこむためのフレームワーク(O/Rマッパー)を紹介します。
Hibernate(ORM)
Hibernateは、O/Rマッピング(ORM)フレームワークの草分け的存在であり、現在も広く使われています。ORMとは、Javaのオブジェクトとデータベースのレコードを自動的に変換してくれる技術です。
これを使うと、開発者はSQLをほとんど書くことなく、Javaのオブジェクトを操作するだけでデータベースの読み書きができます。生産性が大きく向上するため、多くのアプリケーションで採用されているのです。
MyBatis
MyBatisは、Hibernateと同じくデータベースアクセスを支援するフレームワークですが、思想が異なります。HibernateがSQLを自動生成するのに対し、MyBatisは開発者が自分でSQLを記述するのが特徴です。
SQLを直接制御したい場合や、複雑でパフォーマンスチューニングがシビアなクエリを実行したい場合に適しています。XMLファイルやアノテーションでSQLを管理するため、ロジックとSQLを分離できるメリットがあります。
JPA(Java Persistence API)
JPAは、特定の製品名ではなく、JavaにおけるO/Rマッピングの標準仕様(ルール)です。JPA自体はAPIの定義だけで、実際の機能は提供しません。
先ほど紹介したHibernateは、このJPA仕様を実装した代表的な製品の一つです。JPAに沿ってコードを書いておけば、Hibernateから別のJPA実装製品へ比較的簡単に乗り換えられます。
テストで活用されるJavaフレームワーク

品質の高いアプリケーションを開発するためには、テストが不可欠です。Javaには、テストコードを効率的に記述し、実行するためのフレームワークが数多く存在します。
JUnit
JUnitは、Javaの単体テスト(ユニットテスト)を行うための、最も標準的なフレームワークです。Java開発者であれば、誰もが一度は触れることになるでしょう。
メソッド単位で動作を検証するテストコードを簡単に記述でき、アサーション(期待値と実行結果が一致するかの検証)機能も豊富に用意されています。
TestNG
TestNGは、JUnitにインスパイアされて開発されたテストフレームワークです。「NG」は「Next Generation」を意味します。
JUnitよりも高機能で、テストのグループ化や並列実行、依存関係の定義など、より複雑なテストシナリオに対応できるのが特徴です。大規模なプロジェクトや、統合テストで強みを発揮します。
Mockito
Mockitoは、モックオブジェクト(テスト用の偽物オブジェクト)を作成するためのライブラリです。厳密にはフレームワークとは少し異なりますが、テストの文脈で非常に重要なので紹介します。
テスト対象のクラスが依存している別のクラスをモックに置き換えることで、テストしたい箇所だけを隔離して検証できます。外部システムやデータベースに依存しない、安定した単体テストが実現可能です。
フロントエンドやUI系のJavaフレームワーク

Webアプリケーションだけでなく、デスクトップで動作するGUIアプリケーションもJavaで開発できます。ここでは、ユーザーインターフェースを構築するためのフレームワークを紹介します。
Vaadin
Vaadinは、JavaのコードだけでリッチなWeb UIを構築できるユニークなフレームワークです。通常、Webのフロントエンド開発にはHTML、CSS、JavaScriptの知識が必要ですが、Vaadinを使えばJava開発者はサーバーサイドのロジックに集中できます。
内部的にはJavaのUIコンポーネントをWebコンポーネントに変換しており、高い生産性を実現します。
GWT(Google Web Toolkit)
GWTは、Googleが開発したフレームワークで、Javaで書いたコードをJavaScriptにコンパイルする機能を持っています。Java開発者は慣れ親しんだ言語と開発ツールを使って、ブラウザで動作する複雑なWebアプリケーションを構築可能です。
GoogleマップやGmailといったGoogleのサービスでも利用されていました。
JavaFX
JavaFXは、デスクトップアプリケーションやリッチなWebアプリケーションを開発するためのGUIプラットフォームです。かつてJavaの標準GUIライブラリだったSwingの後継として開発されました。
モダンなデザインのUIを構築でき、3Dグラフィックスやアニメーション、動画再生などにも対応しています。
まとめ
ここまで、用途別に18種類のJavaフレームワークを紹介してきました。非常に多くの選択肢があることが、お分かりいただけたかと思います。
用途に合わせて最適なフレームワークを選ぶ
重要なのは、「何を作りたいか」という目的を明確にし、それに合ったフレームワークを選ぶことです。
- これからWeb開発を学ぶなら: 迷わず「Spring Boot」から始めましょう。
- クラウドネイティブな開発がしたいなら: 「Quarkus」や「Micronaut」が有力候補です。
- SQLをしっかり制御したいなら: 「MyBatis」が適しています。
- デスクトップアプリを作りたいなら: 「JavaFX」を検討しましょう。
それぞれのフレームワークには、得意なことと不得意なことがあります。プロジェクトの要件やチームのスキルセットを考慮して、総合的に判断することが成功への鍵です。
今後のトレンドと学習の進め方
今後のトレンドとしては、引き続きSpring Bootの優位性は揺るがないでしょう。一方で、マイクロサービスやサーバーレスアーキテクチャの普及に伴い、QuarkusやMicronautのようなクラウドネイティブなフレームワークの存在感が増していくと予想されます。
学習を進める際は、まず「Spring Boot」をしっかりとマスターすることをおすすめします。Spring Bootを理解すれば、他の多くのフレームワークの概念も理解しやすくなるからです。
学習方法としては、書籍やオンラインの学習サイトを活用するのも良いですが、一番の近道は、実際に簡単なアプリケーションを作ってみることです。公式ドキュメントを参考にしながら手を動かすことで、知識は着実にあなたのものになります。