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システム開発と「具体と抽象」の書評|言われたことの先を考えるようになった

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システム開発と「具体と抽象」(川上と川下の話が刺さった)

トム

SESで約8年、環境を変えられないもどかしさの中にいました。32歳で自社開発企業に転職し、今はClaude Codeと自動化で、仕事も時間も組み直している途中です。
・Javaバックエンドエンジニア(Java歴12年以上)
・資格:基本情報技術者/応用情報技術者/Java Silver/Python3エンジニア認定基礎
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『システム開発と「具体と抽象」』は、何かに悩んでいて手に取った本ではありません。タイトルを見て、単純に興味がわいたので読みました。

結論から言うと、言われたことだけの仕事をこなしている、と感じている人に合う1冊です。開発の手法やツールの本ではなく、システム開発の仕事を「具体と抽象」の目で見直す本です。

いちばん刺さったのは「川上と川下」の話でした。そこから何を変えたのかを書きます。

システム開発と「具体と抽象」はどんな本か

書名システム開発と「具体と抽象」〜問題発見と問題解決を往復する「思考のメタ化」を身につける〜
著者細谷功
出版社技術評論社
発売日2026年7月28日
ページ数・定価272ページ(四六判)/2,200円(税込)
電子版あり(Kindle・楽天koboなど)

書誌情報は技術評論社の書籍ページによるものです。著者は、ビジネス書『具体と抽象』の細谷功さんです。章は次の5つでできています。

章の流れ:業界の課題から始まり、考え方 → 現場 → 組織へと広がる
1
CHAPTER 1 / 第1章SI業界が抱える課題
2
CHAPTER 2 / 第2章「具体と抽象」とは
3
CHAPTER 3 / 第3章SIプロジェクトと「具体と抽象」
4
CHAPTER 4 / 第4章SIプロジェクトにおける落とし穴
5
CHAPTER 5 / 第5章組織の成長と「具体と抽象」
NOTE章の見出しは技術評論社の書籍ページの目次による

第1章は「言われたことは得意だが、提案が不得意である」というSI業界の課題から始まります。第2章で具体と抽象の基本を押さえ、第3章以降で、その考え方をシステム開発の現場や組織に当てはめていく作りです。

読んだきっかけ|悩みではなく、単純な興味

LOG2026年タイトルが気になって読んだ

何かに困っていて答えを探した、というわけではありません。システム開発と「具体と抽象」という組み合わせに興味がわいて、読んでみました。

刺さったところ|川上と川下の話

いちばん刺さったのは、第3章「SIプロジェクトと「具体と抽象」」の「3.1 川上と川下、問題発見と問題解決、具体と抽象」です。この節には「川上と川下の特性の違い」「川上の問題発見と川下の問題解決」といった見出しが並んでいます。

ざっくり言うと、仕事には、何が問題なのかを見つける川上と、決まった問題を解く川下がある、という話です。

同じ仕事の中に、川上と川下がある
UPSTREAM / 川上(上流)何が問題なのかを見つける(問題発見)抽象度が高い。「何を作るか」を決める側
DOWNSTREAM / 川下(下流)決まった問題を解く(問題解決)具体的。「どう作るか」を形にする側
NOTE言葉は第3章「3.1」の見出しによる。説明は私の言い換え

見出しには「問題発見から問題解決は「マトリョーシカ構造」」ともあります。技術評論社の紹介記事によると、どの仕事にも、問題を見つける川上と問題を解く川下が入れ子で入っている、という意味です。上流工程・下流工程のように、工程や役割で分かれているだけではありません。

エンジニアの仕事に当てはめると、たとえばこうなります(私の例)。

大きな仕事にも、小さな作業にも、川上と川下がある
仕事の大きさ
川上(問題発見)
川下(問題解決)
プロジェクト
この業務の何が困りごとか
決まった要件を設計・実装する
1つの機能
この機能で、使う人は何をしたいのか
画面とAPIを作る
1つのバグ修正
なぜ起きたのか、ほかにも同じ原因はないか
該当箇所を直してテストする
NOTEマトリョーシカ構造を、私がエンジニアの仕事に当てはめた例

「自分は実装担当だから川下」と決めつけず、目の前の小さな作業の中にも川上がある、と気づけるのがこの見方のよいところです。

川下が得意な人ほど、川上でつまずく

第3章には「3.2 2つの思考回路の矛盾による問題点」という節があり、「「守り」と「攻め」の違い」「完璧主義と顧客からの信頼が「最大の負債」」といった見出しが並びます。

紹介記事では、SI業界では長く「川下から川上へ」と言われてきたのに実現していない理由として、指示されたことを高品質・高効率にこなす考え方が、正解のない川上ではかえって邪魔になる、と説明されています。本の冒頭には、優れた問題解決者ほど当てはまる9項目のチェックリストがあるそうです。

得意なことが、そのまま強みになるとは限らない
観点
川下の考え方
川上の考え方
前提
正解がある前提で動く
正解がない前提で動く
やること
言われたことを、正確に・速く・ミスなく
何を問題にするかを、自分で決める
見せ方
完璧に仕上げてから見せる
未完成でも早く見せて反応をもらう
NOTE技術評論社の紹介記事と第3章の見出しをもとに、私がまとめた

読んでから変えたこと|相手が何を求めているのかを深く考える

読んでから変えたのは、言われたことだけで終わらせず、相手が何を求めているのかを深く考えることです。言われたことをそのまま作るのは川下の仕事です。その手前で、「この依頼で、相手は本当は何をしたいのか」と一段抽象に上がってから、作るものを決めるようにしました。

本の中では、第2章「2.3 「手段と目的」への応用」で、手段と目的の関係も具体と抽象の関係だ、という話や、「「2つのWhy」とは」「目的とは「使い手視点」で考えること」といった節が出てきます。

考える順番

依頼を受けたときの考え方を、流れにするとこうなります。

具体(言われたこと)→ 抽象(目的)→ 具体(作るもの)
1
具体 / 言われたこと依頼を受ける
2
問い何のための依頼?分からない → 相手に目的を聞く
3
抽象 / 目的相手が本当に求めていることを言葉にする
4
具体 / 作るもの目的に合うやり方を選び直す
5
作る

たとえば、こんな依頼

説明用の例です。「この画面の一覧を、CSVでダウンロードできるようにしてほしい」と頼まれたとします。

  • 言われたことだけ:CSVのダウンロードボタンを付けて終わり
  • 目的まで考える:「CSVで何をするのか」を聞く。毎月Excelで集計して、会議で推移を見ているなら、集計済みの表やグラフを画面に出すほうが、相手の手間は減るかもしれない

どちらが正解かは、目的しだいです。CSVが本当に必要なこともあります。大事なのは、作る前に一度「何のために」に上がって確かめることです。

ほかに読みどころになる3つの話

「なんでもいい」は「見るまで決められない」

第2章には「「なんでもいい」が「これじゃない」に変わる具体と抽象の不条理」という見出しがあります。「なんでもいい」と言われて案を出したら、「これじゃない」と返される。開発でもよくあるすれ違いです。

紹介記事によると、人は抽象的な問いには答えにくく、具体を見せられると「これは違う」とすぐ判断できる、という話です。だから「なんでもいい」は「具体を見るまで決められない」と受け取り、作り込む前に未完成の試作を早めに見せて反応をもらう。アジャイル開発はこの性質を生かした進め方だ、とも書かれています。

相手が何を求めているかを考えるとき、聞くだけで分からなければ、小さく作って見せるのも1つの手だということです。

具体派と抽象派は、お互いがこう見えている

第4章「4.14 「具体と抽象」によるコミュニケーションギャップ」には、「経営者と担当者」「コンサルタントとエンジニア」「エンジニアと経営者」という見出しがあります。

同じ話をしていても、見ている高さがちがう
具体派 → 抽象派考えが浅い具体派から見た抽象派
抽象派 → 具体派視野が狭い抽象派から見た具体派
NOTE技術評論社の紹介記事の説明による

どちらが正しいという話ではなく、お互いがこの構図に気づいていないことが問題だ、というのが紹介記事の説明です。仕様の話がかみ合わないとき、相手と自分のどちらが具体の話をしていて、どちらが抽象の話をしているのかを見ると、整理しやすくなります。

AIが代わりにやるのは「具体」

「おわりに」には「AIが代替していくのは「SIの具体」である」という見出しがあります。紹介記事でも、生成AIが得意なのは決まった課題を具体にすることで、コーディングのような実装からAIに置き換わっているのは偶然ではない、と説明されています。人に残るのは、あいまいな状況から問題の形を言葉にする川上のほうだ、という見方です。

私は毎日Claude Codeを使って開発しています。AIに実装を頼むときも、何を作ってほしいかを言葉にするのは自分です。AIへの頼み方はClaude Code本おすすめ5選やClaude CodeによるAI駆動開発入門の書評でも書いています。

合わなかったところ|特になし

合わなかったところは、特にありませんでした。注意点を挙げるなら、例の多くがSIプロジェクト(受託開発やSES)の現場の話であることです。プログラミングの技術を学ぶ本ではありません。

今のレベル別の読み方

272ページなので通して読める厚さですが、今の自分に合わせて先に読む章を決めると入りやすいです。

今の自分読む章ねらい
言われたことを作る仕事が中心冒頭のチェックリスト → 第1章 → 第3章自分の仕事のどこに川上があるのかを知る
要件定義や提案もしている第2章「2.3」→ 第4章手段と目的の見分け方と、現場の落とし穴を知る
チームや組織を見る立場第5章 → おわりに組織が大きくなると何が起きるかを具体と抽象で捉える

向いている人・向いていない人

  • 向いている人:言われたことだけの仕事をこなしている、と感じている人。SIerやSESで、決まったものを作る側にいる人
  • 向いていない人:開発の手法やツールの具体的な使い方を知りたい人。この本は仕事の考え方の本で、技術の手順を学ぶ本ではありません

あわせて読みたい

私の前職はSESで、そのあと自社開発に移りました。経歴はプロフィールに書いています。読んだ本はほかにも、トムの本棚に並べています。

よくある質問

Q. 細谷功さんの『具体と抽象』を読んでいなくても読めますか?

読めます。第2章「「具体と抽象」とは」で、具体と抽象の基本から説明されています。

Q. エンジニアでなくても読めますか?

読めます。プログラミングの知識がなくても読める内容です。ただ、例はシステム開発の現場(SIプロジェクト)の話が中心なので、開発に関わっている人のほうが、自分のこととして読みやすい本です。

Q. 電子版はありますか?

あります。技術評論社の書籍ページでは、Kindle・楽天kobo・Gihyo Digital Publishingなどで買えると案内されています。

REVISIONS / 改訂履歴
REV.DATE内容
32026-10-16図解を描き直し(図面のデザインにそろえた)
22026-10-14一人称と言い回しの表記をそろえた
12026-10-12初版
NEXT STEP
次に受ける依頼で、作り始める前に「これは何のため?」を1回だけ聞いてみてください。

答えが言われたとおりのものなら、そのまま作ればいい。違う答えが返ってきたら、そこが川上です。

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