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開発生産性の数値を目標にしない|『誤解だらけの開発生産性』の書評

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誤解だらけの開発生産性(数値を目標にしない)

トム

SESで約8年、環境を変えられないもどかしさの中にいました。32歳で自社開発企業に転職し、今はClaude Codeと自動化で、仕事も時間も組み直している途中です。
・Javaバックエンドエンジニア(Java歴12年以上)
・資格:基本情報技術者/応用情報技術者/Java Silver/Python3エンジニア認定基礎
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開発の生産性を上げたい。そう思って手に取ったのが『誤解だらけの開発生産性』でした。

読んでいちばん残ったのは、開発生産性の数値を目標にすると、よくないことが起きるという話です。それ以来、なるべく数値を目標にしないようにしています。

結論から言うと、チームの目標を決めたり、メンバーを評価したりする立場の人に読んでほしい1冊です。一方で、具体的な解決策を求めて読むと、物足りなさが残るかもしれません。

誤解だらけの開発生産性はどんな本か

書名誤解だらけの開発生産性 ストーリーでわかる重圧とペインの乗り越え方
著者石垣雅人
出版社翔泳社
発売2026年7月
ページ数・定価256ページ(A5判)/3,168円(税込)
電子版あり

書誌情報と目次は、紀伊國屋書店のページに載っている出版社内容情報によるものです。出版社の紹介によると、架空の開発現場を舞台にしたストーリーパートと、解説パートが交互に進む作りです。エンジニア、上司、デザイナー、開発マネージャー、PM、QA、サポートと、立場ごとに「開発生産性」という言葉の受け止め方が違うことを描いています。

章は7つで、すべての章題に「重圧」が出てきます。

「重圧」を1つずつほどいて、最後にエンジニア像の話へ
  • 第1章明日までに改善して!と言われる重圧
  • 第2章開発生産性の目的を求められる重圧
  • 第3章測れない開発生産性を求められる重圧
  • 第4章重圧から生み出される小手先の指標
  • 第5章開発リソースは足りないのに増え続ける重圧
  • 第6章エンジニアだけが開発生産性を求められる重圧
  • 第7章開発生産性を上げるだけのエンジニアからの脱却
NOTE章題は出版社内容情報の目次による。

目次を見る限り、第3章と第4章が「測る」「指標」を正面から扱う章です。第7章で、生産性を上げるだけのエンジニアから抜け出す話に進みます。

読んだきっかけ|生産性を上げたかった

LOG2026年開発の生産性を上げたい

読んだ理由はシンプルで、開発の生産性を上げたかったからです。上げ方のヒントがあればと思って読み始めました。

刺さったところ|数値を目標にするとよくない

上げ方を探して読んだのに、いちばん刺さったのは「開発生産性の数値を目標にするとよくない」という話でした。

数値を測ること自体が悪いわけではありません。問題は、その数値が目標になったときです。数値を上げること自体が目的になると、本来上げたかったもの(価値を届ける速さや質)とずれていきます。

これは開発生産性に限った話ではなく、一般に「グッドハートの法則」と呼ばれる現象です。開発の指標を研究しているDORAも、指標の解説ページで指標を目標にするとチームが数値を操作しようとしやすくなる、と注意しています。「年末までに毎日複数回デプロイする」のような一律の数値目標は避けるべき、という書き方です。

数値が目標になると、何が起きるか

説明用の例です。「1人あたりのプルリクエスト数」を目標にしたとします。

目標にした数値だけが良くなる
1
GOAL / 目標「PR数を月20本に」と目標を決める
2
PRを細かく分けて数を増やす中身は変わらない
3
レビューの回数と待ち時間が増える
4
RESULT / 結果NG 数値は上がったのに、届く速さは変わらない
NOTE説明用に作った例。本書の事例ではない。

PRを小さく分けること自体は、レビューしやすくなるので悪いことではありません。ただ、「数を増やすため」に分け始めると、数値と実態がずれていきます。

読んでから変えたこと|なるべく数値を目標にしない

読んでから変えたのは、なるべく数値を目標に持たないことです。

同じ数値でも、使い方で意味が変わる
TARGET / 目標数値を「目標」にする数値を上げること自体がゴールになる
数値を上げる近道が選ばれやすい
数値と実態がずれても気づきにくい
GUIDE / 目安数値を「目安」にする目指すのは、届けたい価値のほう
数値は状態を知るために見る
変化があったら理由を話し合うきっかけにする
NOTEDORAの指標の解説ページの注意点をもとに、私がまとめた。

DORAの解説ページでは、ほかにも、1つの指標だけで判断しない、性質の違うチーム同士を比べない、チーム間の競争に使わない、といった注意点が挙げられています。数値を目標にしないなら、数値は「チームが自分たちの変化を知るための道具」として使う、ということです。

開発生産性の指標と、目標にしたときのゆがみ

「数値を目標にしない」と言っても、どんな数値があるのかを知らないと話が進みません。開発生産性の指標としてよく使われるのが、DORAの5つの指標です(この本の内容ではなく、DORAの公式の解説によるものです)。

指標何を見るか目標にすると起きやすいこと(例)
変更のリードタイムコミットしてから本番に出るまでの時間大きな改修を避け、すぐ出せる小さな変更ばかり選ぶ
デプロイ頻度一定期間に本番へ出した回数中身の薄いデプロイで回数を稼ぐ
失敗したデプロイからの復旧時間すぐ対応が必要になった失敗から、元に戻すまでの時間原因を調べず、とりあえず切り戻して終わる
変更失敗率出したあとにロールバックやホットフィックスが必要になった割合失敗として数えにくい形で直す、挑戦的な変更を避ける
デプロイ手戻り率本番の障害が原因の、予定外のデプロイの割合障害対応を通常のリリースに紛れ込ませる

指標の名前と意味はDORAの指標の解説ページによるものです。右の列は、目標にしたときに起こりがちなことを、説明用に私が考えた例です。

速さと安定を、セットで見る
SPEED / 速さ速さを見る指標変更のリードタイム
デプロイ頻度
失敗したデプロイからの復旧時間
STABILITY / 安定安定を見る指標変更失敗率
デプロイ手戻り率
NOTE分類はDORAの指標の解説ページによる。

DORAは、速さと安定の指標を組み合わせて見るように勧めています。どちらか1つだけを追うと、速さのために品質を落としたり、安定のために出すのを怖がったりするからです。研究では、速さと安定はトレードオフではなく、うまくいっているチームは両方とも良い、とも説明されています。

1つの数値を目標にするとゆがむ。だから複数の数値を、目標ではなく状態を知るために並べて見る。この本で刺さった話と、DORAの注意点は同じ方向を向いています。

物足りなかったところ|解決策は少なめ

物足りなかったのは、解決策があまり書かれていなかったことです。生産性を上げたくて読んだ身としては、「では、どうすればいいのか」の部分をもっと知りたかったです。

出版社の紹介では、手法やチェックシート、章ごとのまとめが用意されているとあります。ただ、タイトルや出版社の紹介を見ても、重心は「何が誤解なのか」「立場によって開発生産性の意味がどう違うのか」を知るほうにある本です。すぐ使える改善の手順を求める人は、そのつもりで読むと期待とのずれが少ないと思います。

ハマりポイント
「上げ方」の本ではなく「誤解をほどく」本

タイトルどおり、開発生産性をめぐる誤解を解くのが中心です。具体的な指標の取り方や改善の手順は、DORAの公式の解説など、別の情報とあわせて読むと補えます。

今のレベル別の読み方

ストーリー形式の本ですが、立場によって先に読む章を決めると、得るものがはっきりします。

今の自分読む章ねらい
生産性を上げろと言われて困っているエンジニア第1章 → 第6章求められている重圧の正体と、エンジニアだけが背負う構図を知る
指標を決める・見る立場の人第3章 → 第4章測れないものを測ろうとする無理と、小手先の指標が生まれる流れを知る
チームや組織をまとめる人第2章 → 第7章開発生産性の目的と、目指すエンジニア像を考える

向いている人・向いていない人

  • 向いている人:チームの目標を決めたり、メンバーを評価したりする立場の人。開発生産性の数値を目標に置こうとしている人
  • 向いていない人:開発生産性を上げる具体的な手順を、すぐに知りたい人

出版社は「上司から開発生産性を求められて、困っているエンジニア」を対象読者に挙げています。私は逆に、求める側の人にこそ読んでほしいと感じました。

あわせて読みたい

読んだ本はほかにも、トムの本棚に並べています。

よくある質問

Q. ストーリー形式とは、どんな作りですか?

出版社の紹介によると、現場の場面を描くストーリーパートと、その場面を説明する解説パートが用意されています。章ごとに学んだことを確かめる「まとめ」もあります。

Q. エンジニアでなくても読めますか?

読めます。登場するのはエンジニアだけでなく、上司、デザイナー、PM、QA、サポートなどです。開発チームと一緒に働く立場の人にも向いています。

Q. 電子版はありますか?

あります。紀伊國屋書店のページでも、電子版ありと案内されています。

REVISIONS / 改訂履歴
REV.DATE内容
32026-10-16図解を描き直し(図面のデザインにそろえた)
22026-10-14一人称と言い回しの表記をそろえた
12026-10-12初版
NEXT STEP
チームで追っている数値を1つ選び、「これは目標?それとも目安?」と書き出してみてください。

目標になっていたら、その数値で本当に上げたかったものは何かを、一言で書いてみる。そこが、数値の代わりに見るべきものです。

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